500円でどこまで行けるか!?【相模川編1~7話】

2015年2月25日

【第1話 バンテリン】

その日、朝起きると足に原因不明の筋肉痛を感じた。
今日は、ひたすら歩く企画だというのに、なんとも幸先が悪い。
カメラなど色々な準備を済ませ、自宅から駅までの道のりで、足の痛みは尋常じゃない
レベルまで達していた。
液体のバンテリンをこれでもか!という位に股関節とふともも付近に塗ったくった。
ズボンに液体が染みてきて、「あいつ漏らしてね?」くらいビッシャビシャだ。

相模川に程近い平塚駅を目指し、横浜から東海道線に乗り込んだ。
徐々に家と家の間隔が離れていく様を車窓から眺めているいるうちに
心なしか、足の痛みは引いているように思えた。
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【第2話 ハーコー野郎】

東海道線が、相模川の上を通過する。
「今からここを歩いてやるぞー!」気合いが入る。
メールが入った。熊とブルーの黒木だ。
「もう着きましたよ」
律儀にも待ち合わせ11時の10分前だ。
今日、このアホな企画にノリノリで参加してくれるナイスガイである。
4人に参加を呼びかけ、協力してくれるのは黒木だけであった。
大体のヤツは、はぐらかした返信をしてくる。
最早、返信すらないヤツだっていた。

平塚駅に到着し、黒木に連絡をすると「西口にいる」という事なので、
改札口を探すも西口だけがなぜか無い。とりあえずバスロータリーのある
一番大きい改札を出る。

もう一度連絡すると「目印がセブンイレブンしかない」という。
想像していた以上に大きい都市で目印が沢山あるなか、
敢えて一番寂れた改札口で待っている黒木はとんだハーコー野郎だと思った。
こちらに向かうとの事なので、5分ほど待ち、やっと合流する事が出来た。
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【第3話 厳選フィリピン料理】

まずはスタートラインである相模川河口を目指す。
時計はすでに、予定の出発時間から30分遅れた11時30分を指していた。
人間方位磁石である僕は感覚で相模川の方向がわかっていたので、
商店街を先導し歩く。

しばらくすると、怪しげな小道に入ってしまう。
そこには、大きわかりやすく「歓楽街」と書いた看板があり、多種多様な店の名前が下に連なってある。
その中でも、ひと際異彩を放っていたのが、
「厳選フィリピン料理 与太郎」だ。
なんか、もう。色々ツッコミ所がありすぎる。

まず、そこまでフィリピン料理がまだ浸透していないなかで、いきなり「厳選!」と言われても困る。
最近の子に、おしどり夫婦としてイメージが強い北斗晶が、かつては「あのラス・カチョーラス・オリエンタレスだった」
と言ってもピンとこないのと同じ事だ。
いつか「厳選フィリピン料理 与太郎」に行ってみたいと思いながら「歓楽街」を後にする。
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【第4話 スーパースター大門三郎】

歓楽街からしばらく歩くと、体育館のような場所に長蛇の列が出来ている。
並んでいる人は皆高齢者だ。
すると通りすがりのおばあさんが僕たちに「誰が来ているんだい?」と問いかけてきた。
「わかりません」と答えると食い気味で近くにいたおばさんが「大門三郎だよ!」
と言った。「ほぉ!大門三郎かい!」と質問をしてきおばあさんが驚く。
結局、僕たちは「大門三郎」が誰なのか一切わからないままでいた。

感覚で川を目指し歩いてるが、一向に川があるような雰囲気がない。
川どころか、山が近づいて来ている。
「方向間違ったかも!?」と言うと、黒木が「まじかよ!!勘弁しろよ」と
呆れる。それもそうだ、予定だと平塚の駅から河口まで10分もあれば着くものと計画
しており、それを黒木にも伝えていたが、もうすでに歩きはじめて1時間は経っている。
僕は「よし!誰かに相模川の方向を聞こう!」と提案した。
旅は人のふれあいが必須項目だ。
道行く人に声を掛けようとするも、「あの人はもしかしたら前科者かもしれない」とか
「意外とあの人は心が繊細そうだから声を掛けたら傷つけてしまう」とか
わけのわかないことを言い。人を避けていた。
そう、二人とも人見知りなのだ。

道の向こうから歩いてくるおばあさん3人組を見て僕は「あのおばあさん達なら殴ってくる事はないだろうしいけそうだな」
と言うと、黒木はうなづき「さいあくな事態になった場合、殺せるしな」と同意した。
さいあくな事態ってどんな事態だよと思いながら意を決して俺は声をかけた
「すいません・・・相模川はどちらですか?」すると明らかに3人同時に、
今歩いてきた方向を指さしている。つまり、平塚駅の段階から逆方向に歩いてきたのだ。
やってしまった・・・と思っていると、おばあさん3人組が「あっちでしょ!!」「いや、あっちよ!!」と
平塚駅から相模川までの行き方で、なんと内輪モメをおっぱじめたのだ。
おばあさんはとても好戦的だ。
とりあえず、平塚駅まで戻る事がわかったので、おばあさん達にお礼を言い、歩き始めた。
先ほどの「大門三郎」の会場まで戻ってきた。
大勢の老人が並んでいた。黒木は「年金で大門三郎見に来てんだろうな」とつぶやいた。
「金の出どころはなんでもいいだろ!」と僕は返したが、よくよく考えてみると確かに
大門三郎はほとんど税金で食ってるんだろうなぁと考えた。
税金でおいなりさんを食べたり、コンサートが終わった後、税金で「歓楽街」に遊びに行くんだろうか。

老人たちに「大門三郎最高!!」と叫び、先を急いだ。
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【第5話 勝負師 黒木】

平塚駅を過ぎ、快調に河口を目指していると、平塚競輪場を通過した。
黒木に「ここが平塚競輪場だよ」と指さすと、「こんなところにあるんだ~」と
実家にでも帰ってきたかのように競輪場に入っていったのだ。
「おい!なにしてんだよ!?」というと「ちょっとだけ!見るだけ!」とAV男優よろしく
お願いしてきた。。
その時思いついた。今回の500円でどこまでいけるかの企画内であれば増やすことだって
ありだな。それを黒木に伝えると、「やろう!」とノリノリだった。
黒木は、パチンコをよくやっているギャンブラーであることを思い出した。
「でも使っていいのは絶対500円だけだぞ」と釘を打っておいた。

競馬などはたまにやるが、競輪は初めてなので少しワクワクしていた。
中へ入ろうとすると駅の改札のようなゲートがあった、いやな予感がした。
すると守衛さんが、「入るのは100円だよ」
入場料がかかるのか!?ここで100円を使ってしまうのは非常に痛手だ。
でも黒木は「せっかくここまで来たし」ともうやる気まんまんだ。
確かに増やせば問題ないんだ。そう自分に言い聞かせ100円玉をゲートに入れ中に入った。

そこは完全にこの世の終わりのような風景だった。
黒木が「誰ひとりまともな人がいない」と言うくらいだ。

いざ、賭ける自転車を選ぶが、選手などわからないので、
適当にオッズだけを見て、配当の低い
かたい自転車だけを、おっさんの見よう見まねでマークシートに記入する。
200円で勝負する事にした。窓口で200円を払い券を発行してもらう。

ふと黒木の券を見ると持ち金400円全額賭けている!
「おい!お前全部使ってんじゃねぇか!」と怒鳴りつけると「勝てばいいんだよ」と自信満々だ。
セリフはかっこいいが、黒木はつくづくダメなタイプの大人であると認識した。

案の定、二人ともレースを外し、黒木は全額を失った。
俺は残金200円しかない。
平塚駅を出発してすでに2時間。

まだスタート地点に着いていない。
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【第6話 コーンマヨ】

やっと僕たちは相模川河口のスタート地点に到着した。平塚駅からすでに3時間経過しており、
時計の2時30分を表示していた。通常15分で来れる距離だ。
風が強いがとても日差しが気持ちよく、広々とした河川敷の少年野球を横目にまるで散歩気分で快調な
スタートを切った。

しばらく、歩くと道端にあるものが落ちていた。半分食べた形跡のあるパンだ。
先を歩く黒木を呼び止め「おい!いいものがあるぞ!」とパンを指さすと、
「まじかよ・・・」と顔をしかめる。
「だって、黒木はもうお金がないんだから今のうち食べておけよ」と提案する。
黒木はパンを裏返すとコーンマヨパンであることがわかった。
しかも、まだ新しく、捨ててから1日も経過していない品質だ。
しかし、コーンマヨには草が付着しており、虫もくっついてるのを見て黒木は、
「さすがにこれは無理だわ・・・まだそんな腹減ってないし」
「じゃあ、持っていけば?」と聞くと、
「え!?持っていくのはいいの!?」
・・・こいつ後々食う気かよ。さすがに腹を壊されたら困るので、止めるように言った。

歩き始めると恐らく不法に野菜を育ててるであろう畑があった。
道が一気に細くなり進むのをためらうが、確か河川法でこういった河川敷に
農園を作るのを禁止されているはずだという、うる覚えの知識で、不法侵入にはならないと
自分に言い聞かせ先に進むと、明らかに生活感のある小屋があった。
さらに先にいくつかの小屋があり、行き止まりになっている。
そして、小屋の前に4人おじさんがたむろしていて、こっちの様子を伺っている。
嫌な予感が頭をよぎった。今は1月で冷え込んでいる時期だ。もしかして敢えて塀の中に入る事を望んでいる
連中なのではないか?
右に小道があるを確認し、方向を変え進み少し坂を上がると視界が開けた。
遊歩道に出ると、前をタヌキが横ぎった。
「なんだか不思議な場所だけど、住んだら住んだで悪くない場所なのかもな」
とつぶやくと黒木もそれに同意した。
おじさんたちにとっては楽園なのかもしれない。
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【第7話 変態珈琲おじさん】
湘南銀河大橋をやっと通過し、太陽もオレンジ色に変わる頃。
そろそろ足に鈍い痛みを感じ始めた。
夜勤明けの黒木にも疲れが出始めているのを見て、
そろそろ休憩しようと言い。僕はリュックからコーヒー豆とコーヒーミル、
ガスとキャンプ用コンロとコップを用意した。
コーヒーミルを回しながら、コンロに火を付け、用意していた「6年水」
を取り出した。「6年水」は、6年もの間谷川岳でろ過されたまろやかな水である。
その時、僕は気付いた。「あれ!水沸かす鍋がねぇや!」
「いや、なんでコーヒー豆を挽いてからそれ気付くんだよ!」
「その辺になんか落ちてないかな?」
その辺を見回すと、誰かが死んだのだろうか、花束見つかった。
「さっきの楽園ならあるかも!」
「あそこまで戻るのにどんだけかかると思ってんだよ!」
黒木の言う通り、あそこからもうすでに2時間は歩いている。
100円ショップなら水を沸かす容器があるかもしれない。
女子中学生の二人組がたまたま歩いていたので声を掛ける。
「すいませーん、この辺に100円ショップはありますか?」
すると、一人が「あ!ありますよー」
「ほんとですか!?」と場所を聞こうとすると、もう一人の中学生が、
「ないですないです!そういうの知りませんから!」と足早に立ち去っていった。
「川からコーヒー挽きながらおっさんが出てきたらそれは完全に変態だろ」
僕は黒木のツッコミに納得しながらも、「川からコーヒー挽きながらおっさんが出てきても変態ではないと、
教育されているヤツいないかな?」
「いないよ!」
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